溜め込み症候群とは。原因を知って改善していこう

最終更新日:2016年4月1日

テレビなどでゴミ屋敷の報道をみたことがあるひとは多いはずです。

本人たちはあのゴミ屋敷の中で苦痛を感じてはいないのでしょうか。

また、その「癖」を直すことはできるのでしょうか。

今回はそんな「溜め込み症候群」についてご紹介します。

1.溜め込み症候群とは

溜め込み症候群は
・物を過剰に集める
・物の整理整頓ができない
・物を捨てることができない
という3つの症状によって定義されます。

人からみて一見価値のないようなゴミやガラクタを大量に集めて、家がそのゴミやガラクタであふれかえってしまいます。

また、それを整理整頓できず散らかしっぱなしの状態にしたままなので、当然足の踏み場や寝床も無くなり、日常生活に支障をきたしてきます。

そしてそのことに対し苦痛を感じながらも、捨てることができない。

これが溜め込み症候群の症状です。

溜め込み症候群は実は性格の問題などではなく、れっきとした心の病(精神疾患)としてアメリカ精神医学会から認められています。

また、これは「うつ病」「統合失調症」「摂食障害」などすべての精神疾患にいえることですが、その疾患によって「自分や他人に不利益が生じている」ということが診断の要になります。

そのため趣味で何かをコレクションしている人たちは、この溜め込み症候群には当てはまりません。

たまにペットボトルのキャップを収集している人がいますが、一見他の人から見ればそれはゴミ同然に映るかもしれません。

しかし本人たちにとってそのキャップは宝物ですから、集めることに苦痛は覚えず、むしろ幸福を感じます。

また、通常はキャップを集めることによって他人に不利益が発生することもありませんよね。

しかしそのキャップの量が自分の管理能力を超えてしまって、家に置くところがなくなり、家の外に大量に置きだしたとします(宝物を外に保存するというのは通常考えられませんが)。

そうなると当然周りの住民にも迷惑がかかってくるわけで、極端な例ですがこの場合は治療の対象になるということです。

コレクションのために借金をするようになったなどのケースも治療の対象ですね。

少し専門的な話になりますが、医者が精神疾患を診断するときに使うマニュアルに「DSM(精神障害の診断と統計マニュアル)」というものがあります。

このDSMは現在第5版のDSM-5が使われていますが、これ以前のマニュアルであるDSM-IV-TRで定義される「溜め込み症候群」は、強迫性障害の下位分類である「強迫的ためこみ」という項目に分類されていました。

強迫性障害については最近メディアでもよく取り上げられているので名前を耳にしたことのある方も多いでしょう。

この障害は「自分でばかばかしいと思っていても同じ考えが何度も頭に浮かび、同じ行為を繰り返してしまう」というものです。

主に、何度手を洗っても自分の手が汚れているのではないかと思い繰り返し手を洗う「不潔恐怖」、鍵をちゃんとしめたか気になって何度も戸締りを確認してしまう「確認強迫」などの症状があります。

しかし近年の研究ではこの強迫性障害とはまた性質が違うのではないかという研究が数多く示され、2013年発行のDSM-5では「強迫関連障害」という独立した精神疾患として認められるようになりました。


2.溜め込んでしまう原因

ではなぜ、物を捨てれずに溜め込んでしまうのでしょうか。

また、なぜ必要でないようなものを拾ってくる買ってくるのでしょうか。

それが例えゴミであったとしても、物を捨てるときに「いつか必要なときが来るのではないか」「捨てた後に激しく後悔するのではないか」などの思い込みによって物を捨てれなくなります。

また、どんどん溜め込んでいるうちに溜め込んだものが大量になりすぎて、自分で捨てるのが億劫になるためなかなか物を捨てれないのです。

必要でないものを溜め込んでしまう心理としては、根底に対人関係などの寂しさがあると考えられます。

友人や家族などの頼れる相手や相談できる相手がいなく、その寂しさを物で埋めようとしています。

もっと根本的なことをいうならば、そのような人は幼少期に何らかの剥奪体験があったと考えられます。

ラットを使った実験で、自分のエサを剥奪されたラットはその後、エサをためこむようになるという実験結果があります。

生物は剥奪体験をすると物を溜め込むということが本能的に備わっているわけですね。

これを人間に当てはめるならば「幼い頃におもちゃを散らかしたまま片付けなかったら、親にそれを捨てられた」というささいな体験から「災害などで突然家族を失った」などの大きなことまでが剥奪体験となり、溜め込みのトリガーとなるわけです。

このような心的外傷(トラウマ)が、溜め込み症候群の根本的な原因であると考えられています。

また、精神分析と呼ばれる無意識を対象とした心理学の分野からの意見では「仕事などライフイベントでの困難やストレスを、ゴミを溜め込んでしまうという別の問題を自ら人工的に作り上げることでそれに置き換えて、現実での辛い不安をその問題に投影して抑圧している」という考えもあります。

より大きな問題を自ら作り上げることで現実での問題を直視せず、見てみぬふりをするわけですね。

そんなことはないという声が聞こえてきそうですが、この理論は全て無意識に対してのものですので本人の意識には現れないものです。

いずれにしても溜め込み症候群になってしまう原因は、現実での強いストレスやトラウマ体験に対する本能的な防御反応と定義することができます。


3.溜め込み症候群を克服する方法

残念ながら、溜め込み症候群というものは「考え方を変えてみる」などの自分一人の力ではほとんど改善することができません。

先にも述べましたように、溜め込み症候群とは本人なりのストレスへの一種の対処法であり、その自分で培った対処法を一人で改善するのはとても難しいことです。

そのため、治療には精神科の助けが必要になります。

精神科と心療内科、名前的にどちらかというと行きやすいのは心療内科でしょう。

しかし、勘違いされている方が多いのですが、心療内科とはストレスなど心の問題が大きくかかわっている「身体の病気」を治療するところで、うつ病などは身体の症状が出るケースが多いため治療の対象になりますが、溜め込み症候群などの身体的症状が出ない病を治療する機関ではないのです。

「精神科」という響きに抵抗はあるかもしれませんが、適切な医療機関は心療内科ではなく精神科になります。

また最近よくみかけるメンタルクリニックなども精神科と同じものです。

具体的な治療法は、精神療法と薬物療法になります。

精神療法とはカウンセリングのことで、その中でも認知行動療法と呼ばれる治療法が用いられます。

これは「捨てたら後悔するかもしれない」などの一種の認知の「歪み」を治療者と一緒に矯正していく治療になります。

薬物療法ですが、これはうつ病などに用いられるSSRIと呼ばれる薬や、まれにADHDに用いられるメチルフェニデートと呼ばれる薬を用いる場合もあります。

抵抗はあるかもしれませんが、治療法はいずれも精神療法を主としたものであって、薬物療法が主になることはないので心配することはありません。

また、家に散らかったゴミを片付けるのが億劫という場合は、専門の業者が多数ありますので、インターネットなどで探してもらえればすぐに見つかります。

溜め込み症候群と思ったら治療しよう

溜め込み症候群についてご紹介しました。

溜め込み症候群は高齢になればなるほど、病識(自分が病気であるという認識)がなくなっていき、治療の効果もあまり出なくなります。

もし周りに溜め込み症候群かもしれない人がいた場合、治療を促しても前述したように溜め込むにはそれなりの理由があるため、治療を拒否されるかもしれません。

しかしその理由を否定せず、理解し寄り添ってあげることで信頼関係ができ、治療に前向きになってくれる例も数多くあるので、めげずに声をかけてあげることが大切です。