みなさんはジャネーの法則というのをご存知でしょうか。
おそらく、多くの方は「それはなに?」と首をかしげるかもしれません。
しかしながら、ジャネーの法則というのは、多くの人にとても身近な、そして理にかなった心理学的理論です。
ジャネーの法則とは
まず、ジャネーの法則とはだれが発見し、理論づけたものなのかを見ていきましょう。
ジャネーの法則のジャネ―とは人の名前です。
19世紀のフランスの哲学者ポールジャネーが発案し、それを甥であり心理学者でもあった、ピエールジャネーがさらに理論を深めて、著書においてその法則を紹介しました。
つまり、ジャネーの法則とは哲学を土台とした心理学的理論であると言えるでしょう。
これは単に心理学的アプローチだけではなく、人間の体内時間の進み方にも触れています。
ですから、古来よりヨーロッパでは哲学と心理学を完全に分離されてきたわけではないように、ジャネーの法則が哲学なのか心理学なのかを問うことはできません。
時間の長さの感じ方
みなさんは、時間の長さの感じ方について、疑問を感じたことはないでしょうか。
例えば、学校で退屈な授業を受けているときには、それが50分てあっても、1時間にも2時間にも感じてしまう。
しかし、恋人といっしょに過ごしているとき、また趣味に熱中しているときの1時間はあっという間に経ってしまう、という具合です。
これを「時間の経過とは相対的なものだ」と言った文学者もいます。
もちろん、時間は時計を見ればすぐにわかる通り、時計は毎秒を正確に平等に刻んで刻んでいます。
それなのに、なぜ同じ時間を短く感じたり長く感じたりするのでしょうか。
それを学問的な観点から説明してくれる法則の一つがジャネ―の理論です。
ジャネ―の理論
ジャネ―の法則を簡単に説明すると「生物の生涯の、ある特定時期における時間の心理的長さは、その生物の年齢の逆数に比例する」というものです。
ちょっとわかりづらいのでこう言い換えてみます。
例えば、今ここに還暦を迎えた人間がいるとしましょう。
還暦ですから60歳です。
そしてその隣に6歳の子供がいるとします。
6歳というと小学校に入学したての年齢ですね。
彼らはふたりとも生まれてから、1年1年を積み重ねて、かたや還暦を迎え、かたや6歳になったわけです。
その1年というのは365日であり、その違いはありません。
では、その1年という一つの区切りについて考えてみましょう。
1年は誰にとっても1年であり、365日です。
しかしながら、60歳の人間にとっては自分の人生(生命の長さ)の60分の1ですが、6歳の子供にとっては自分の人生の6分の1でしかありません。
60分の1と6分の1が同じ長さ(1年)です。
同じ1年という期間なのに、人生における比率が全く違うのが分かるでしょう。
比率というのは「度合い」、または「全体に占める割合」と表すこともできます。
この、人生における一定時間の比率について発見し、理論づけられたのがジャネ―の法則です。
同じように36歳、30歳、24歳、18歳の人間の1年は、それぞれ生涯の36分の1、30分の1、24分の1、18分の1となっていきます。
徐々に上記にあげた6歳の子供の6分の1に近づいてきますよね。
そして、12歳の人間の場合はその生涯における1年の割合が12分の1です。
これらの数字からお気づきになった方も多いでしょう。
そうなんです。
年齢が2倍になると、人生における1年の割合が半分になります。
同じように3倍になれば3分の1、4倍になれば4分の1になります。
小学校で習った反比例がそのままこの理論には当てはまるのです。
寿命とジャネ―の法則
上記で述べた通り「生物のある時期における時間の心理的長さは年齢の逆数に反比例する」というのがジャネ―の法則です。
これを生物学的な側面から見るとどうなるでしょうか。
例えば、ゾウもネズミも一生で心臓の打つ回数はほぼ15億回とされています。
しかしながら、ネズミの寿命はネズミの種にもよりますが、せいぜい3年です。
一方ゾウの平均寿命は70~80年と言われていますから、ずいぶん違いますね。
しかし、どちらの動物も一生に心臓の打つ回数は15億回です。
だとすると、ネズミはゾウよりも相当生き急いでおり、ゾウにとっての1年はネズミにとっての約2週間程度です。
細胞分裂とジャネ―の法則
みなさんは、嫌いな授業や嫌いな先生の授業時間が長くて長くて仕方なかったと思った経験はないでしょうか。
また、子供のころの1日はとても長くて下校時間がまだまだかと思っていたのに、今ではなんだか1日がすぐに終わってしまう気がする。
年が明けたと思ったら、もうあっというまに年末だ……ということはないでしょうか。
これは人間が老化する生物だというこということを示す証左でもあります。
人は受胎してか母親の胎内で猛烈な勢いで成長します。
成長して大きくなるということは細胞分裂が活発だということです。
同じように、子供は生まれると大きくなるのが早いですよね。
昨年着られた服が今年はもう着られないということは日常茶飯事です。
これは子供の細胞分裂が活発なことを意味しています。
それが、歳を経るごとに細胞分裂は徐々に落ち着き、子供が成長するのとはまったく違う様相をていしてきます。
細胞分裂が活発だということは、何度も何度も細胞が生まれたり死んだりしているということです。
これは言ってみれば何度も生まれて何度も死んでいるのと一緒です。
子供はこれを絶えず繰り返しています。
ですから、1日に何度も一生を送っている(もちろんこれは無意識ですし、細胞レベルの話ですが)のと同じです。
ですから、その分「(これだけ細胞分裂しているのに)1日がまだ終わらなの?」と思っても仕方ありません。
一方、大人になると細胞分裂の回数は子供に比べるとだいぶゆっくりになりますから、時間の経過を早く感じるようになります。
ジャネーの法則について知っておこう
ジャネ―の法則と言われると「それはなに?」と思ってしまいそうですが、意外と身近なものです。
心理学が占いやトリックに利用されていることは多々ありますが、同じように普段なにげなく感じていることや、不思議に思っていることも学問的な理論で説明がつくことが多いんですね。
子供のころのあの長く退屈な時代がよかったのか、それとも時間が過ぎるのが早くていつの間にか年の瀬を迎えてしまう大人の生活が良いか、天秤に掛けるのは難しいですね。
「ジャネーの法則とは?時間の長さの感じ方を表す法則」への感想コメント一覧
ジャネーの法則というのを初めて知りました、誰にでも身近に感じる差に名前があったとは思いませんでした。
ネズミの例を見ると慌てて生き急ぐより、のんびり過ごしていたほうがいい気がしました。
誰しもが感じているこの現象に、こんな法則名があったのは初めて知りました。年齢や感情によって、感じ方が変わるのは面白いですね。