わたし達は子供の頃からみんなで協力することの大切さを教えられますよね。
「三人寄れば文殊の知恵」などのことわざもあり、能力やモチベーションによって生まれる個人のパフォーマンスは集団で行動するほど高まるようなイメージが一般的にはもたれています。
ですが、現実はそんな単純なものではないと証明したのが「リンゲルマン効果」なんです。
今回はそんなリンゲルマン効果についてご紹介します。
リンゲルマン効果ってなに?
リンゲルマン効果が発生した状態を、社会心理学用語で「社会的手抜き」と呼びます。
その名前の通りに、人間はたくさんの人数で行動するほど手抜きをすることが分かったのです。
その傾向は男性のほうが顕著であり、男性のほうが個人成績を重視して、女性の方がが集団行動での協調性が高いことが伺えます。
このリンゲルマン効果は最初、1913年にフランスの農業工学者であるマクシミリアンリンゲルマンさんが自身の論文のなかで発表しました。
それがのちに、ドイツ人のメーデさんの論文で引用されたことであらためて注目されて「リンゲルマン効果」として世間に広まっていきます。
リンゲルマン効果を証明する実験
リンゲルマン効果はどれくらい人間のモチベーションに影響を与えるのか不思議ですよね。
モチベーションという心理的な作用を測定することはできません。
そこで、それを証明するためにリンゲルマンが論文のなかで紹介した実験は、肉体労働など運動のときに一人あたりが発揮する腕力を数値化して、運動に参加する人数が増えるごとに腕力の数値がどのように変化するのかを調べるという内容でした。
そしてリンゲルマンが行った幾つかの実験のひとつが、リンゲルマン効果を説明する時にもっとも引用されている綱引きの実験なんです。
実験結果
綱引き実験では、まず最初にひとりの人物に全力でロープを引かせて腕力を測定します。
それからロープを引く人数を2人、3人、4人と増やしてきます。
例えば、4人が常に全力でロープを引いたのなら、各々が1人でロープを引いたときに測定された全力の数値を合わせた数字が出なくてはいけません。
しかし、現実にはそれとはまったく異なる実験結果が出てしまったんです。
仮に1人が全力を発揮した腕力を100%とした場合、それが2人だと93%になり、3人だと85%、4人で77%、5人だと70%‥と、ロープを引くために参加する人数が増えるごとに、1人の人間が発揮するパフォーマンスは著しく低下していくんです。
これが、8人でロープを引いた場合に発揮された個人のパフォーマンスは49%。
なんと半数を下回ってしまったんです。
リンゲルマン効果が発生する理由
無力感による怠惰個人行動をすると結果はすべて自分次第で、報酬もそれに比例するものです。
しかし、集団行動において個人の貢献度は曖昧です。
それは参加する人数が増えるほど分かりにくくなっていき、個人の貢献度が報酬を左右するという感覚が薄れていきます。
そうすると、少ない労力でタスクを済ませて報酬を獲得するほうが良いという損得勘定が生まれてしまいます。
全体像がわからない弊害集団行動だと役割分担がなされて、個人に与えられる情報や作業は全体のなかでは部分的なものにすぎません。
そのため、個人で頑張っても、逆に頑張らなくても全体にどういった影響が与えるのか分からないため集中力が低下しやすいのです。
責任感の低下個人に任された仕事は全責任を負わされるので手を抜きにくいものです。
しかし、複数の人間で背負った仕事では個人的なモチベーションが反映されやすく、興味のない仕事だと手を抜いたり、疲れたときにと他人任せに考えたりしやすくなります。
リンゲルマン効果への対処
リンゲルマン効果の温床になりやすいのは「個人の貢献度がわからない」「全体責任で失敗の影響が小さい」といった状況です。
つまりリンゲルマン効果を回避するためには、組織や集団のなかにあっても、個人を尊重する責任感や裁量を与えることが大切なんです。
例えば、ある部署で怠惰に過ごしていた社員が別の部署へ移動して個人の責任が増したことで、別人のように働き始めることは会社のなかでは珍しくありません。
それぞれの個人意識を喚起したり、自律性のある行動を認めて責任を与えてあげることで、リンゲルマン効果によるパフォーマンスの低下に対処することができます。
リンゲルマン効果について知ろう
大勢で行動する時には甘えて手を抜いてしまう、または、他人が手を抜いている様子を見て自分も頑張るのをやめてしまうといった事は、わたし達も普段の生活で身に覚えがあることですよね。
人間ですから、いついかなる時も100%の力を発揮するというわけにはいきません。
ですが、リンゲルマン効果を知っておくことで、集団のなかで自分が頑張らなければいけない時に、そのための邪魔になる要因を把握して対処することができます。
そうすることで、必要なときには周囲に流されずに高いパフォーマンスを発揮しましょう。
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