「心理的リアクタンス」という言葉をご存知ですか?一見難しい専門用語に思われるかもしれませんが、実は私たちの生活によく起こっている現象です。
そこで今回は「心理的リアクタンス」が一体どのような現象なのか、さらに人間関係への活かし方についてご紹介します。
心理的リアクタンスとは反発作用
テレビを見ながらこの番組が終わったら仕事や家事に取りかかろう、と考えていたのに、家族に「いつまでだらだらしているつもり?」と指摘されやる気が削がれる、なんて経験、誰でも一度はあるのではないでしょうか。
まさにこの現象が「心理的リアクタンス」です。
おそらくこの時の皆さんの内心はこうでしょう。
「今からやろうと思ってたんだよ」心理的リアクタンスとは、自分の自由が外部から脅かされそうになった時、また外部に強制されそうになった時にその自由を取り戻すための手段が「反発」という形で表れた状態のことを言います。
上記の例で考えてみましょう。
番組が終わってから仕事や家事に取りかかろう、と考えるのはその仕事や家事を受け持つ当事者の裁量に任されています。
つまり、いつ、どのタイミングで行動するかは本人の自由です。
しかしここで家族という他者に「いつまでだらだらしているつもり?」と指摘されると、本来なら自分で決めた通りに行動してよいはずの当事者は、個人の領域に侵入されたような気持ちになります。
これが外部から脅かされる、ということですね。
そして反発心が沸いてきます。
あなたに言われなくても番組が終わったらやろうと思っていたのに、なぜわたしを何も考えていない怠け者のように扱うの。
今からやろうと思っていたのにもうやる気が無くなったよ。
これらの反発はまさに自分の自由を取り戻すためのものです。
人間関係で起こりやすい心理的リアクタンス
そもそも「心理的リアクタンス」は人間の、自由を奪われたくない、という気持ちから起こる現象です。
逆に考えるとそれは、人間が自由の尊重を求める性質を持っているという表れでもあります。
その点をきちんと踏まえると、職場や恋愛などにおいて相手を尊重した人間関係が築けるようになるでしょう。
職場において心理的リアクタンスが発生しやすい例を挙げてみます。
上司と部下の関係です。
上司を経験豊富で仕事のできる女性と設定しましょう。
部下は年下。キャリア的にも、周囲を気にかけて仕事ができるような余裕もまだまだ上司には及びません。
それでもなるべく先回りをした行動を心掛け、上司に迷惑がかかることがないようにと奔走していました。
しかしこの上司はよほど仕事ができるのでしょう。
周到な準備をすべく仕事に取りかかろうとする部下のさらに先に回って指示を出すのです。
最初のうち部下は自分の至らなさを反省し、これもキャリアアップのためだと素直に対応をしていました。
しかし次第に不満が募るようになります。
上司があまりに早くからあれこれ指示するもので、自分のやり方やペースが乱されているように感じたのです。
それはまるで、部下が仕事の出来ない奴だと確認したがっているような、説教の機会を狙っているような、そんな印象さえ受けるものでした。
もちろん上司の経験の多さや仕事への姿勢は尊敬できます。
ただ、部下は部下なりのペースで仕事を進めようとしていたのに、上司の態度はそれさえも否定しているように感じられたのです。
上司から見て部下の至らない点が目につく気持ちは分かります。
しかしいくら部下が頑張ってもやはり経験の差というものはあります。
余裕も経験に比例して生まれるものでしょう。
何がいけなかったか、お分かりでしょうか。
ここでは部下のペースを無視して、自分を基準に仕事を進めてしまった上司が問題でした。
この上司は、部下が考えて、計画を立てて、仕事に取り組む、という自由を自分のペースに強制させようとしました。
その結果、部下は上司に対してキャリアや仕事への姿勢には尊敬するけれど不満を抱くようになったのです。
心理的リアクタンスですね。
自分のキャリアアップのためだ、と考えていた部下が最終的に不満を抱くことになった所もポイントです。
心理的リアクタンスは、例えそれが当事者にとってプラスになると分かっていても、他者から強制されたり脅かされたりすると無意識的に反発心が芽生えます。
自由を尊重するのか、奪うのか
何回も述べているように、心理的リアクタンスは自由を奪われたくない、という気持ちから起こるものです。
社会において良好な人間関係を保ちたい場合は、端的に言うと個人の自由を侵さなければいいのです。
今回の例では、上司側の心掛けが重要になるでしょう。
一度任せた仕事に口を挟む時は、部下の能力、やり方、ペースを考えた上でする、部下と自分は違う人間なのだということを理解することが大切です。
また、心理的リアクタンスは職場だけでなく恋愛や営業などにも有効です。
その際は必ずしも自由を尊重することが関係の発展に繋がるとは限りません。
恋愛において周りから駄目だと言われるほど相手のことが好きになる、という例がありますが、これはまさに心理的リアクタンスの典型です。
駄目と言われるほど反対の行動をとってしまうという天邪鬼な性質を理解すると、押すだけではなく引いてみる、という行動がいかに重要なことかが分かるでしょう。
具体的に、いつもメールを送り過ぎている人なら全く送らない日を作る、相手にそっけない人ならいつもより距離を詰めてみるなど行動してみると良いでしょう。
心理的リアクタンスを活かしてよりよい人間関係を
心理的リアクタンスについて、その内容と活用法についてご紹介しました。
反発心、と聞くとネガティブなイメージを受けるかもしれませんが、ものは捉えようで、恋愛関係で挙げたように有利に働く場合もあります。
時と場合を考えて、自分にとって良い方向で使う事が出来ると今まで以上に人間関係が楽しくなるでしょう。
「心理的リアクタンスとは?人間関係に活かそう」への感想コメント一覧
心理的リアクタンスという言葉を、初めて知りました。自分の事をひねくれ者だと思っていましたが、誰でもこの様な気持ちになりうるのだと分かると安心しました。確かに自由への願望は強い方です。
心理的リアクタンスは多かれ少なかれ誰もが持っているものなのですね。思ったことを頭ごなしではなく、一呼吸おいて相手に伝えたいと思います。
心理的リアクタンスという言葉は知らなかったので、有意義な記事でした。あれこれ言われると落胆し、怒りや不満が湧いてくること、ありますよね。逆に指示する側は、相手にそういう気を起こさせないように指示する工夫が必要なのですね。
心理的リアクタンスという言葉を初めて知りました。
ですが、記事を読んで、なるほど、経験あるなと感じました。
相手の気持ちをよく考えずに、ついつい口出ししてしまうことがあり、
相手に反発されてしまったということがありました。
良好な人間関係を築くためにも、相手のことを尊重するように心がけたいです。
心理的リアクタンスという言葉を初めて聞きました。
学生時代によく親に勉強しなさいとか片付けをするように言われ反発心が生まれたことをよく覚えています。
近い人間関係の親や兄弟間で起こりやすいと思いました。友人でも関係が深いほど起こるものだと思います。
このような言葉の認知度が高くなるともっと人間関係に余裕ができてよいと思いました。
言う側にも言われる側にも心理的余裕が生まれますね。
すごく良い記事でした。ありがとうございました。